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「<生活工芸>と自然」:鞍田崇×中沢新一×石倉敏明×成瀬政憲

2015/03/04

昨年全3回にわたって開催され、好評いただいた野生の科学公開研究講座「社会と暮らしのインティマシー」。
その総まとめともいえるトークイベントが、全国で開催されている『「生活工芸」の時代』関連イベントの一環として、会津若松で開催されることとなりました。

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■トーク趣旨

20世紀という重く大きな時代が終わり、新しい世紀が訪れた、ちょうどその頃に始まる話です。この10数年を、僕たちは「生活工芸の時代」と呼んでみることにしました。そう呼んでみることで、いま自分たちが生きている時代をすこし突きはなし、俯瞰してみようと思いました。

たまたまそうだったのか。なにか必然的なことがあったのか。まだ近すぎてよくわからないことがたくさんあります。たくさんあるけれども、こうして言葉にとどめることで、自分たちが経験しているものの輪郭をたどり、それを次の時代につなげていくこと。それが『「生活工芸」の時代』という本のねらいです。

できあがったのは、答えではなく、問いかけの本でした。ここからまた議論がはじまる、そういう本。その議論を本の中だけに留めるのではなく、より多くの方々と直接共有する場を持ちたいと考え、刊行後、ゆかりの地域を中心に、各地でトークを開催することとしました。

このたびの会津編は、『「生活工芸」の時代』の執筆者のひとりである石倉敏明さんに、人類学をバックグラウンドとして活躍される中沢新一さん、山伏としての顔とともに手仕事や食にまつわる企画を手がける成瀬正憲さん、そして哲学者の鞍田崇の四人が話し手をつとめます。

「生活工芸」は、作家物の生活道具で、とくに2000年以降に急速にブーム化したものをいいます。しかしながら、この言葉そのものは、けっして新しいものではありません。

たとえば、世界恐慌後の1930年代に民藝や工業デザインの双方が自分たちの試みを説明するにあたって、この語を用いていますし、終戦直後にも、新しい指針を示すものとして地方の地場産業の現場で頻繁に使われました。「生活工芸」という言葉が出てくるのは、いずれも生活や社会が大きく変化し、それに付随して身近な道具のあり方が見直されたタイミングといえます。

そうした点をふまえると、山深い福島県三島町で、すでに30年以上前から「生活工芸運動」が手がけられてきたことの持つ意味は無視することができません。ここでいう「生活工芸」は作家物ではありません。いわゆる民具です。三島町をはじめとする奥会津地方では、雪に閉ざされる農閑期には、ヒロロやマタタビの蔓を用いた編み組細工を手がけるのがならいでした。そこにフォーカスをあて地域内外のコミュニケーションを活発化させ、コミュニティの再生をはかることが生活工芸運動のねらいでした。

民藝、工業デザイン、地場産業、そして民具。この多様性は、そもそも私たちにとって、生活に根ざした物との関わりがきわめて大事なファクターであることを示しているのではないでしょうか。人間にとって道具とは何か。物づくりとは何か。地域や素材、自然はそこにどう関与するのか。ちょっと壮大ですが、そろそろそういうことを正面から論じなおすときなのかもしれません。そうして会津はそれを論じるにふさわしい場所だと思うのです。

ひとりでも多くの方とお話しする機会になればうれしいです。(文・鞍田崇)

 

■イベント概要

日 時/2015年3月18日(水) 19:00-21:00
場 所/三番山下(☎0242-26-1330)
福島県会津若松市大町1丁目1-57 紀州屋1934 2F (☎0242-26-1330)
料 金/1,500円(1ドリンク付き)
定 員/30名(要申し込み)
後 援/Book! Book! AIZU 実行委員会

◎アクセス
JR「七日町駅」から徒歩10分・JR「会津若松駅」から徒歩15分
◎お問合せ・お申し込み
Book! Book! AIZU 実行委員会(担当:五十嵐)bba@bookbookaizu.info

<お申し込み>
上記アドレスまで、メールにて、件名を【生活工芸】とし、【お名前】【電話番号】【人数】を明記してお申し込みください。

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鞍田崇
哲学者。1970年兵庫県生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科修了。現在、明治大学理工学部准教授。編著として『〈民藝〉のレッスン』、『焼畑の環境学』、共著として『「生活工芸」の時代』、『人間科学としての地球環境学』など。初の単著として『民藝のインティマシー』を今春刊行予定。
http://takashikurata.com/

石倉敏明
1974年生まれ。中央大学大学院総合政策研究科修了。現在、秋田公立美術大学美術学部講師(アーツ&ルーツ専攻)。人類学者。多摩美術大学芸術人類学研究所助手を経て、明治大学野生の科学研究所研究員、現職。共著として『人と動物の人類学』『道具の足跡』『折形デザイン研究所の新・包結図説』など。
www.akibi.ac.jp/

成瀬政憲
1980年生まれ。中央大学大学院総合政策研究科修士課程修了。現在、日知舎代表。山形県の出羽三山で山伏修行を積みながら、地域の食、手仕事、芸能などを実地調査し、その文化継承と今日的展開のための仕組みづくり、商品の開発・製造・販売にわたる経済活動、出版などの文化発信事業を行っている。
http://hijirisha.jp/

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