About

野生の科学とはなにか

現代は眼と大脳を偏重する文明をつくりだした。世界にあるあらゆるのものが可視化できると信じて、人工の眼をいたるところに設置して、モニターを続けている。大脳は世界を情報として読み取り、そこに含まれているパターンを意味として取り出そうとしている。そんな風に世界が可視化され、情報として読み出されるようになれば、世界を管理するのはきわめて容易になる。世界をなだめ、平準化して管理すること、一言で言えば世界を家畜化することを、都市というものが発生した新石器時代以来、人類はずっと求めてつづけてきた。世界を家畜化するこの夢は、驚異的な発達を遂げた現代の技術によって、いまやひとつの現実となりつつある。

しかし、ほんとうに世界は家畜化されつくしてしまったりするものなのだろうか。カメラやセンサーをすり抜けていく微細な現実が、世界には満ち溢れている。視覚化できない力やイメージが、世界の隙間をくぐり抜けて流動し続けている。大脳過程を模倣したアルゴリズム(計算手順)では、計算することのできない複雑な過程が、いまこの瞬間にも世界の土台を織り上げつづけている。家畜化された思考には、そのことが見えない。しかし、家畜化されていない野生状態にある世界は、いまだにここにあって、絶え間のない活動を続けているのである。

野生の科学研究所は、そのいまだに野生状態にある世界の姿をとらえることのできる方法を開発することをめざしている。コンピューターを超えるアルゴリズムを備えた自然にむかって開かれた思考を、ひとつの確実な方法を備えた科学として生み出そうと考えている。野生の科学はいままで存在しなかった学問である。しかし、それはいまもっともその創出が求められている学問でもある。野生の科学には大きな可能性がある。なぜなら、人類の抱える潜在的な心の能力が、いまだに野生の状態にあるからである。

主な研究プロジェクト

実践

「くくのち=みどりの学校」創設

社会、経済、精神性の3つの領域に新しいエコロジーの思想を確立し、若い世代にその思想を伝えていく場として
「くくのち=みどりの学校」創設する。ヴァーチャルな空間で学び、リアルな世界で実践することを通じて、自然との間に新しい回路を開いていく。
愛知県のJAと共同で行う「赤とんぼプロジェクト」、トビムシとの共同事業「奥多摩プロジェクト」、「祝島モジュール」の実践などが開始される。

企業連携

アルス・ヤポニカの研究

社会の構成法、経済システムの構築などにはじまって食やファッションにいたるまで、
日本文化が生み出してきたさまざまな機構や製品には特別なメカニズムが内包されている。
こんにちJapan Value と呼ばれているものは、この潜在メカニズムから生み出された。このメカニズムを多様な領域で析出する試み。

研究

南方熊楠と野生の科学

明治の博物学者南方熊楠は、野生の科学の先駆者であり、彼のなした仕事の中には未来的な科学の方法の萌芽を見いだすことができる。これまで放置されてきた彼の業績を新しい野生の科学の視点によって、今まで未発掘の可能性を取りだす試み。

対称性と自然計算

私たちは心=脳の働きの中に、非対称性と対称性という二つの異なる機構の共生状態(バイロジック)を発見してきた。非対称性は線形論理にしたがって世界を把握するが、無意識につながる対称性は世界を全体性によって把握する。対称性は心と自然との間に通路を開く。これが自然計算を創出しようとする新しい科学の探求との共通の土台をしめすことになる。

組織概要

名称

野生の科学研究所
Institute pour la science sauvage

目的

野生の科学研究所は、科学というものをもっと豊かで、具体的なものにつくりかえていくという目的のもと、日本文明の潜在能力を目覚めさせ、21世紀に必要とされる「新しい学」の創出をめざします。今日まで蓄えられてきた膨大な知的活動の成果を最大の資源として、自然科学•経済科学•社会科学等を包摂する、大きな原理を探求していきます。

活動内容

  • 野生の科学に関する研究・調査
  • 国内外の研究者との学術交流の推進
  • 刊行物、Web等による情報の相互活用・共有化と公開
  • 研究会、講演会、講座、国際研究集会、シンポジウムなどの開催
  • 野生の科学を基盤とした仕組み作りの発掘、企画・提言とその充実
  • 国内外の野生の科学に関する研究者の育成・援助
  • 芸術活動・文化財等保存運動の支援とアーカイヴ化
  • 共同研究による社会貢献
  • その他、本研究所の目的に相当する事業
Page Top