『出羽三山・修験道を知る』
2012/05/11
野性の科学研究所に関係の深い講師陣が担当する、山伏・山の思想についての連続講座が、中野で開催されます。各回とも興味深い内容になっております。奮って御参加ください。
『出羽三山・修験道を知る』
会場: 風の旅行社・東京本社 7F セミナールーム (東京都中野区)
http://www.kaze-travel.co.jp/access_tokyo
*JR中央線・総武線 中野駅北口より徒歩約10分
■第一回
神仏和合の山々- 出羽三山と山の神話学 -
講師 : 石倉 敏明(いしくら としあき)
日時: 2012年5月12日(土) 14:00~16:30
出羽三山と呼ばれる山々は、古くから神話的な想像力の舞台となってきました。その背景には、神道や仏教といった宗教の成立以前から続いている、深々とした庶民の心の信仰が存在しています。生きている人間ばかりでなく、死者や未生の魂や自然の精霊や諸々の神仏が一体となったその空間は、いまもあらゆる国の人々を惹き付けてやみません。この講座では、あらゆる霊性の潮流を受け入れて独自に深め、神仏の和合する領域として山々を発展させてきた庶民の心の歴史に焦点を当てます。また、これらの山を駈け、里の人々と自然の聖域を結ぶ活動を担ってきた山伏たちの活動の根源にある「循環する哲学」の魅力についてお話したいと思います。
石倉 敏明(いしくら としあき)
人類学者/神話学者。多摩美術大学芸術人類学研究所助手を経て、2011年より明治大学野生の科学研究所研究員、羽黒山伏。2009年より「これからの日本に本当に必要なものだけを集めた学校=くくのち学舎」にて動物神話講座を担当。主な論文に「裸の精霊」「女神と対称性」「生を与えまたそれを奪う神」等。共著に『折形デザイン研究所の新・包結図説』、高木正勝によるCD作品とのコラボレーションに『タイ・レイ・タイ・リオ紬記』(神話集)がある。
■第二回
月山ブナ帯における食 -手仕事にたずさわる人と文化
講師 : 成瀬 正憲(なるせ まさのり)
日時: 2012年5月26日(土) 14:00~16:30
山形県の中央に聳える月山は、山麓一帯の生命の源泉であり、固有の食文化を育んできました。とりわけこの山の抱く大雪は類稀なブナ林を育て、ここから野生動物と狩猟、山菜と採集、土地に根ざした手仕事など多様な「山の文化」が展開し、この山に繰り返される自然との対話は山伏が体現する「山の思想」の基盤をなしています。
月山に生きる人びとの「食」と「手仕事」の具体的な営みから、その背後に広がる豊かな「月山ブナ帯」の世界へ分け入ってゆく講座です。
成瀬 正憲(なるせ まさのり)
1980年生まれ。山伏。羽黒町観光協会観光推進員。岐阜県山奥に育つ。高校卒業後アルバイト資金でカナダ留学。帰国後中央大学で共同体論・自然哲学研究。出羽三山で山伏修行に出会う。同大学院卒業後、越前三国湊のまちづくりに携わる。羽黒修験「秋の峰」入峰。2009年羽黒町移住。大聖坊山伏修行のコーディネート、くくのち学舎の山と講をテーマにしたプロジェクト「千山講」、月山山麓のブナ帯文化の聞き書きなどを展開している。
■第三回
山伏の温泉 -出羽の秘湯と放浪について(肘折口・角川口など)
講師 : 坂本 大三郎(さかもと だいざぶろう)
日時: 2012年6月9日(土) 14:00~16:30
古代、温泉は地下を通じて海へと繋がっていると考えられ、海を神聖視するのは、海をわたって日本列島に辿り着いた日本人のルーツを感じさせます。湯の文化に深い関わりを持っていたのが、日本の原始的な自然崇拝信仰の末裔である山伏でした。
温泉所山形の秘湯と山と海などの自然を通してみる日本の深淵
坂本 大三郎(さかもと だいざぶろう)
1975年千葉県生まれ。羽黒山伏。
自然と人を結ぶ文筆家として現在「エココロ」「spectator」などに執筆を寄せる。
単行本『山伏と僕』(リトルモア社)が今春発行。
■第四回
羽黒山の峰入り -秋の峰・冬の峰の事例から
日時: 2012年6月23日(土) 14:00~16:30
講師 : 本田 晶子(ほんだ あきこ)
かつて羽黒修験では春夏秋冬の〝峰入り〟修行が行われていました。現在でも四季の峰は形を変えながら継承されています。
人々が山を目指すのはなぜなのか、〝峰入り〟ではなにが行われているのか、とりわけ峰入り修行のなかでも代表的な「秋の峰」と、大晦日の晩に結願を迎える「冬の峰」(松例祭)に焦点をあて、映像や資料を紹介しながら皆さんと一緒に考えてゆきます。
人々の生活のすぐそばにあった〝修験〟の儀礼や思想、それを摑まえるには、身をもって峰に飛び込むのが一番ですが、この講座ではその入口まで皆さんをご案内いたします。
参考図書
島津弘海、北村皆雄編著『千年の修験―羽黒山伏の世界』新宿書房 2005年刊
五来重著『山の宗教―修験道案内』角川ソフィア文庫 2008年刊
本田 晶子(ほんだ あきこ)
1975年生まれ。文化系・山伏を目指して現在修行中。羽黒山の開祖・能除仙に魅かれて、羽黒山に通いはじめる。羽黒山荒澤寺の秋の峰入り修行に10年通い、羽黒修験の智恵と魅力を発信したいと奮闘中。日本の宗教芸能、神楽や民間信仰などをフィールドワークしている。特技はどこでもすぐに眠れること。「成城寺小屋講座」を企画・運営。
■第五回
今だから山の思想- そして月山への道標 -
日時: 2012年7月7日(土) 14:00~16:30
講師 : 星野 文紘(ほしの ふみひろ)
昨年の3.11以降、私たちの生き方考え方を今一度問われている時ではないでしょうか。
日本人にとって山とは何なのか。昔から常に私たちの先人は山から色々の事を学んできた。その事が今忘れかけているし、再生しなければならない時ではないでしょうか。山に入って下りてくればそれは「いのち」をいただくことであるし、山は生きて行く上で必要な食を与える「いのちの源泉」であるし、山に上ることは「ざんげ」でもあるし、そしていのちの最後は山に納まる。人間の一生は全て山にお世話になるのだという日本の文化は多くの日本人の心のよりどころであった。その「こころ」と「いのち」を月山から学んでいくことをこの講座では皆さんと一緒に進めて参ります。
星野 文紘(ほしの ふみひろ)
1946年山形県出羽三山羽黒山宿坊「大聖坊」の三男として生まれる
1971年東洋大学文学部を卒業後、「大聖坊」十三代目を継承し、「秋の峰」に初入峰、山伏名「尚文」拝命する。2007年「冬の峰百日行」の松聖を務め、2008年より「松例祭」所司前を務める。2000年より三日間の大聖坊山伏修行も実施。また各地で修験道の講演をし「こころ」「いのち」「健康」「農業」「芸能」の重要性を訴える。
現職:出羽三山神社責任役員理事、出羽三山祝部総代、多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員、NPO法人公益のふるさと創り鶴岡理事など