公開研究会:ホモ・エデンス 可食性の人類学(全3回)
2014/05/23
公開研究会:ホモ・エデンス 可食性の人類学(全3回)
第1回:世界の始まりから隠されてきたこと
野生の科学研究所公開研究会のお知らせです。ご参加お待ちしております!
人は先行する「他の人」から生まれた「肉」である。しかし、社会には「人は食肉ではない」という根本的なタブーが存在し、近親相姦の禁止と共に、法や道徳の根幹をつくる。たくさんの違反例があるにもかかわらず、この掟はいまも人を律している。食べるとは、食べられるとはどういうことなのか。「食べるもの」としての人間は、「食べられるもの」や「食べられないもの」とのあいだに、どのような関係を築いてきたのか。肉でなくなった死者は、どこに還ってゆくのか。「食べる/食べられる人」をつくる性と食の交わり、母と胎児の関係、食物網と料理の様態、神話の構造などから、人と動物の根幹をつくる《食の次元》を考える。
第1回: 世界の始まりから隠されてきたこと
食肉や栽培植物の起源を説明する世界中の神話には、食べ物がもともと神話的な主人公の身体の一部であった、あるいは体内から排出された屎尿や垢であった、というエピソードが残されている。日本列島の伝承にも、女性の屍体や排泄物から食べ物がつくられた、という神話が少なくない。すべてが変容する物語の世界で、なぜ世界の始まりの時代にあったという「食べ物の起源」の秘密が語り継がれてきたのか。暴力と可食性を結ぶ観点から、食と排泄の根源にある存在論を掘り起こす。
講師:石倉敏明
コメンテーター:中沢新一
日時:2014年6月21日(土)14:00~(13:20開場)
場所:明治大学 野生の科学研究所
資料代:500円
予約不要
次回以降の予定は下記の通りです(第2回目は7月を予定)。
第2回: 目には見えない食べ物
多くの「生き物」は食糧として殺され、祭儀や料理の過程で「食べ物」に変容する。それは火や水や煙によって、自然界の生き物として持っていた形や質を変えられ、「文化」という異次元に生命が晒される手順でもある。文化のなかに取り込まれ「目に見えない次元」に抑圧された自然=生命が、神話の中で語り出される仕方とは? 精神分析学が語らない未知の「コンプレックス」とは? カンニバル(食人)とインセスト(近親相姦)という二つのタブーの重なる場所で起こる生命過程の変容と、目に見えない次元から始まる新たな倫理学の可能性に迫る。
第3回 人と食を結び直す鍵
世界の民族誌に学び、「食べ物のリアル」を取り戻すことは可能だろうか? たとえば現代人が食べる一食分の弁当には、世界的な食糧生産と流通市場が介在している。現代人は美食や健康食といった食の情報に飢えている反面、産地偽装や遺伝子組み換え作物の影響、放射能汚染や疫病など「食の安全性」に頭を悩ませてもいる。素材となった肉や野菜は「自然界の産物」であると同時に、人工的に手を加えられた記号的な「工業製品」でもある。このパラドックスを自覚的に克服する試みのなかから、生命と食の連鎖に基づく「食の対称性」次元を明るみに出す。
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石倉敏明(いしくら としあき)
人類学者/神話学者。秋田公立美術大学講師(アーツ&ルーツ専攻)。多摩美術大学芸術人類学研究所助手を経て、明治大学野生の科学研究所研究員、現職。共著・編著に『人と動物の人類学』『道具の足跡』『タイ・レイ・タイ・リオ紬記』等。