明治大学黒川農場を訪問しました
2012/09/06
8月31日、打合せを兼ねて明治大学黒川農場を訪問しました。
黒川農場は今年の4月に完成したばかりのまだ新しい施設。環境・自然・地域との共生をコンセプトとし、農場と里山、太陽光、風力、バイオマス等の自然エネルギーを活用の仕組みや、加工食品の実習、レクチャー施設などを併せ持ちます。
副農場長の佐倉先生のご案内で園内をまわります。
広大な敷地に農圃が広がります。
農学部の学生さんの実習、研究のための栽培、市民向け農業講座(明治大学リバティアカデミー特別企画 アグリサイエンスアカデミー)などが行われています。
栽培中のシカクマメ。
その名の通り、さやが四角い豆種です。
原産は沖縄の豆で、さやや種子はもちろんのこと、花も塊根も食べられる、というパーフェクトな植物。ゆくゆくは味噌などの加工食品も計画中とか。
その他にもナスや枝豆、トマト、ピーマンなど季節の野菜が豊かに実ります。
温室では葉ものの野菜を栽培中。
土に植わっていないほうれん草が並ぶ景色に、なんとも不思議な気分になります。だいたい苗から20日ほどで出荷できるくらいになるとか。
栽培方法を知っているからか、食べた人からは「なんとなく味気ない」という感想もあるそうです。
太陽光、風力、バイオマス等の自然エネルギー循環システムにも力を入れる黒川農場には、風力発電や木質ペレットによって温室やエネルギーをまかなうシステムもそろっています。
ただ、これもまだまだ発展中の技術です。薪からはじめてペレットまで、機械一台につき、おおよそ4日かけて農場で1日に消費するエネルギーがつくられます。
印象的な話をひとつ。
黒川農場では市民向け農業講座(アグリサイエンスアカデミー)が開催されています。ここでは6月から翌年2月にわたって、実際の農作業を通した講義が行われます。
たとえば夏野菜の生育。トマトなら、一人だいたい8本程度の苗を育てるそうで、当然収穫物は持ち帰ります。一人8本分のトマトというと、ひと夏の収穫量は相当なものになります。最初はそのまま食べたり、ピューレにして楽しんでいた受講生も、夏が終わる頃には「もうトマトなんて見たくない!」というほど、山のように収穫したトマトを食べ続けることになります。
自然は時に過剰なものです。でも、佐倉先生はそれが大切なことなのではないかとお話されています。夏のトマトは季節に合った収穫物で、この時期に必要な栄養価を多く蓄えており、水分も豊富です。それを食べることは季節の循環をそのまま身体で感じることで、もう十分となれば体が満足し、次の夏まで食べたいと思うことははありません。自然の道理、身体の摂理にかなっていることなのです。
ある意味では過剰ともいえる部分を併せ持つ「農」。平均化して安定的な収穫を目指すだけでは、自然の持つ過剰さをも組み込んだダイナミックな循環は見えてきません。
最近の「農業」は「業」の部分が肥大化し、人間の根本にある「農」がおざなりになっているのではないかと佐倉先生は語ります。
明治大学野生の科学研究所は、この秋を皮切りに、黒川農場と恊働しさまざまな形でこの「農」についての取組みを行っていきます。
どうぞご期待ください!